「満室になってから売る」は、
本当に正解なのか
空室2戸を埋める前に、考えておきたいこと
「あと2戸決めれば満室です。満室になってから売った方が高いですよ」。この助言は、半分は正しい。ただし残りの半分には、時間と賃料と融資という条件が隠れています。
SCENE 01
管理会社から、一本の電話が入った
全10戸のアパートで2戸が空室。管理会社からは、賃料を月5,000円下げ、広告料を増やせば決まりそうだと提案されました。満室になればレントロールは美しくなり、査定価格も上がりそうに見えます。
ここで多くのオーナーは、空室を埋めることを先に決めます。しかし売却を視野に入れるなら、順番は逆です。先に売却査定を取り、どの条件で入居を決めると価格がどう変わるかを確認する必要があります。
値下げした新規賃料は、買主が将来の募集賃料を考える材料になります。空室が消えても、物件全体の収益力が低く見えることがあります。
SCENE 02
買主が見ているのは、満室の「中身」
売主にとっての満室は「空室がゼロ」。一方、買主と金融機関は、その満室が今後も続くのかを見ます。
賃料の妥当性
周辺相場より高すぎないか、反対に急いで下げすぎていないか。
入居時期
売却直前に複数戸が同時入居していないか。短期解約のリスクはないか。
募集条件
フリーレント、広告料、家具付きなど、表面賃料の外側に負担がないか。
入居者属性
法人契約・学生・生活保護など、物件特性と継続性をどう評価するか。
つまり「満室」という一語では足りません。自然な条件で埋まった満室と、費用を先に使って作った満室では、同じレントロールでも評価が分かれます。
SCENE 03
空室を埋めるまでに、何を失うか
満室化には、募集期間だけでなく、原状回復費、設備交換、広告料、フリーレント、賃料値下げが伴います。さらに重要なのが、待っている間の市場変化です。
早く市場へ出せる。買主に改装や賃料設定の余地を残せる。
募集費用と時間を使う。金利・買主需要が変わる可能性がある。
たとえば満室化で査定が300万円上がっても、原状回復・広告料・賃料値下げの累積と、数か月分の保有コストで差が縮むことがあります。「高く売れるか」ではなく、満室化に使う費用と時間を回収できるかで考えるべきです。
LAST SCENE
満室にしてから売るべき物件、待たずに売るべき物件
結論は、満室か空室かの二択ではありません。最も避けたいのは、査定前に条件を下げて入居を決め、その賃料が長期間レントロールに残ることです。
空室のままでも、募集履歴、原状回復の見積り、想定賃料の根拠が揃っていれば、買主は収支を組み立てられます。場合によっては、自分で部屋を作りたい再生型の買主にとって、空室は欠点ではなく余地になります。
本記事は一般的な売却判断の考え方を示したものです。実際の評価は、地域、構造、築年、賃料、入居状況、融資環境、買主層等によって異なります。個別物件では最新の査定と募集状況をご確認ください。