売却益3,000万円、
税金は600万円とは限らない
一棟物件の「手残り」を左右する5つの数字
1億円で買った物件を、1億3,000万円で売る。差額は3,000万円。ここで「長期譲渡なら税金は約600万円」と暗算したくなります。しかし、一棟収益物件の税金は、購入価格と売却価格の引き算だけでは決まりません。
SCENE 01
同じ1億3,000万円で売った、2人のオーナー
AさんとBさんは、よく似た一棟マンションを同じ価格で売却しました。売却価格はどちらも1億3,000万円。それでも、税引後の手残りは同じになりません。
7年前に購入
長期譲渡に該当。購入時の資料を保管し、取得費と譲渡費用を確認できた。
4年前に購入
短期譲渡に該当。さらに購入契約書が見つからず、取得費の確認に時間がかかった。
違いを生んだのは、物件の魅力ではありません。税務上の「時計」と「記録」です。個人所有の場合、長期と短期では所得税・住民税等の合計税率が概算で20.315%と39.63%まで変わります。
長期・短期の判定は「売却した年の1月1日時点」で所有期間が5年を超えているか。購入から丸5年経っただけでは、長期にならない場合があります。
SCENE 02
税額を動かす、5つの数字
- 01
売却価格
スタート地点。ただし、通帳に入る金額と課税される利益は別物です。
- 02
取得費
購入代金や購入手数料など。資料がなく取得費が分からない場合、売却価額の5%を概算取得費にできる制度がありますが、利益が大きく算出されやすくなります。
- 03
減価償却費
建物部分は、購入額をそのまま取得費にできません。所有期間中の減価償却費相当額を差し引くため、帳簿上の取得費が下がり、想像より譲渡益が増えることがあります。
- 04
譲渡費用
売却の仲介手数料、売主負担の印紙税、売却のために直接必要な測量費や一定の取壊し費用など。通常の修繕費や固定資産税は、原則として譲渡費用ではありません。
- 05
所有期間
個人所有では税率を大きく分ける数字。売却時期が数か月違うだけで判定年が変わるケースもあります。
SCENE 03
オーナーが陥りやすい、3つの勘違い
ローン残債は、譲渡所得から引ける?
引けません。残債は税額計算ではなく、最終的な現金の手残りを計算するときに差し引きます。
購入額と売却額が同じなら税金はゼロ?
そうとは限りません。建物の減価償却により取得費が下がっていれば、同額売却でも譲渡益が出ることがあります。
売却前の修繕は全部、譲渡費用?
原則として違います。資産の維持管理のための通常の修繕費は、売却に直接要した譲渡費用とは区別されます。
LAST SCENE
査定額を見る前に、探しておきたい書類
税金を正確に近づける最初の仕事は、計算ではなく資料探しです。購入時の売買契約書、仲介手数料の領収書、土地・建物の価格内訳、改良費・設備費の資料、減価償却の履歴、売却時の費用見積りを揃えます。
高く売れたかどうかは、成約価格だけでは判断できません。税金と残債を差し引いたあと、いくら残ったか。そこまで見て初めて、売却の結果が見えます。
本記事は個人が所有する国内の土地・建物を一般的に売却する場合を前提とした概説です。法人所有、特例、相続・贈与、消費税その他の個別事情により取扱いは異なります。最終判断は税理士・所轄税務署へご確認ください。