サブリース付きの一棟アパートそのまま売るか解約して売るか
受取賃料と契約から売り方を考える
「借上げの契約が残っていると売れないのだろうか」「解約して家賃を直接受け取る方が、高く売れるのでは」。サブリース付きの一棟アパートでは、売却と契約の解約を分けて考えることが出発点です。受取収支と引継ぎ条件を揃えれば、今の契約を続けて売る案も比較できます。

解約を先に決めず、継続した場合の売却条件を確認しましょう。解約後の案は、実現できる時期・移行費用・直接運営の収支まで揃えて比較します。家賃の差額だけでは、どちらが有利かは決まりません。
この記事の目次
01 / CONTRACT FIRST
売却することと
解約することは別
サブリースでは、オーナーが会社へ貸す「借上契約(マスターリース契約)」と、会社が入居者へ貸す「転貸借契約」があります。通常の管理委託とは異なり、サブリース会社自身がオーナーに対する借主です。[1]
国土交通省のFAQも、オーナーチェンジにより従前と同じ内容の借上契約が承継される場合を想定しています。したがって、サブリースの解約が売却の必須条件というわけではありません。一方で、契約を続けたまま購入するかは買主ごとの判断です。[1]
所有者変更の手続きも先に確認する
借上契約の所有者変更条項を読み、サブリース会社への通知・必要書類・送金先の切替え時期を確認します。売買契約で継続を前提とするなら、買主にも契約一式と最新の変更内容を提示し、引き継ぐ条件を揃えましょう。
「売却すれば契約は消える」「買主なら自由に解約できる」とは扱わず、地位の承継や例外が問題になる場合は個別に法律専門家へ確認します。本記事は主に住宅の普通借家による借上契約を想定しています。
02 / INCOME THAT REACHES YOU
買主に示すのは
受け取れる家賃と負担
入居者賃料が合計で月60万円、オーナーへの借上賃料が月51万円だとします。契約を続けて売る案では、まず51万円と実際の控除・支出を整理します。60万円を、そのまま買主が受け取れる家賃として表示すると、契約上の収入と食い違います。
そのまま解約後の利益増にはならない
直接運営では空室や管理などの負担も変わる
金額は説明用の仮定です。共益費等を除く月額賃料とし、借上賃料から別途控除がない例です。借上率の相場・会社の利益・実際の査定を示すものではありません。
解約後は差額が丸ごと増えるわけではない
直接賃貸へ移行すれば、管理委託料、募集費用、空室・未回収への備えなどの負担が変わります。修繕費や原状回復費は、サブリース中からオーナー負担の場合もあるため、現在と移行後で重複なく整理します。[2]
同じ範囲で比較する月額の仮定
- サブリース継続
- 借上賃料 51万円
- 直接賃貸へ移行
- 家賃 60万円 − 追加負担 9万円
= 51万円
この仮定では比較額は同じです。追加負担が変われば差も変わります。
追加負担9万円は管理・募集費用や空室損等を月額換算して置いた説明用の数値で、相場ではありません。両案に共通の税金・保険・修繕費等、借入返済と解約時の一時費用は含めていません。実際には費用の負担範囲を一つずつ照合します。
借上賃料の金額だけで査定しない
買主が検討する材料には、現在の受取額に加え、次の賃料改定、免責期間、費用分担、会社からの送金状況があります。「家賃保証」という名称でも、同じ額が将来ずっと続くと決めつけられません。国交省も家賃減額などのリスクを示しています。[2]
契約による管理負担の軽減を評価する買主も、運営方法の変更を重視する買主も想定できます。これは査定時に確認したい実務上の観点であり、サブリースの有無に一律の値下がり率を当てはめる根拠ではありません。
03 / CHECK BEFORE TERMINATION
予告期間だけでは
解約を確約できない
普通借家の借上契約では、オーナーからの更新拒絶や解約申入れに、借地借家法上の正当事由が問題になります。契約書に「何か月前に通知」と書かれていても、その期間を守れば必ず終わるという意味ではありません。国交省関東地方整備局も、契約の記載だけで判断しないよう説明しています。[3]
「違約金を払えば終了できる」と自己判断せず、条項の意味と適用条件を確認します。売却したいという事情だけで正当事由が認められると決めつけず、争いがある場合は弁護士に相談してください。
合意で終了する場合も条件を書面にする
当事者間で合意解除を検討する場合は、終了日、精算額、入居者契約の扱い、資料・鍵・敷金の引継ぎを一体で確認します。費用が提示されたときも、契約上の根拠がある請求と合意のための提案を分けて確認しましょう。
定期建物賃貸借では、契約の成立要件や満了通知など確認事項が異なります。また、会社の債務不履行を理由とする解除も別の検討が必要です。普通借家の解約申入れと混同せず、契約の種類と終了理由を特定します。[4]
買主から解約を購入条件として求められた場合は、実現性が未確認のまま引渡しを約束せず、解約が成立しないときや遅れたときの扱いを、売買契約の締結前に整理します。
04 / TWO LAYERS OF HANDOVER
会社との契約終了と
入居者の退去を分ける
借上契約を終了させることは、入居者を一斉に退去させることと同じではありません。解約後も賃貸運営を続けるなら、入居者との契約を誰がどの条件で引き継ぐかを確認する必要があります。
国交省の標準契約書には、借上契約の終了時にオーナーが転貸人の地位を引き継ぐ仕組みが設けられています。ただし、標準契約書の使用は一律に義務づけられていません。手元の借上契約・転貸借契約・承諾書等に、同じ仕組みがあるか照合します。[5][3]
入居者との賃料・期間・特約
貸主の変更と通知の担当
二層の敷金と前受賃料
未収・未払と精算の基準日
家賃の振込先と管理窓口
鍵・修繕対応・保証契約
特に、会社がオーナーへ預けた敷金と、入居者が会社へ預けた敷金は別の関係です。残高と返還義務を混ぜず、誰から誰へいくら引き継ぐかを確認します。入居者の保証契約も、貸主や管理会社が変わるときの手続きを個別に確認してください。
解約の合意前に入居者へ振込先の変更を通知するなど、切替えを先走らないことも大切です。通知日と新しい管理の開始日を、関係者間で揃えましょう。
05 / COMPARE THE TWO ROUTES
解約後の高値より
実現条件まで比べる
「解約できればこの価格」という見込みと、現契約を踏まえた具体的な購入提示は、確かさが異なります。金額の横に、前提・有効期限・調査や融資の条件を並べて比較します。
今の条件で売る見積もりを取る
契約を引き継ぐ
- 受取賃料と費用を提示
- 所有者変更を確認
- 買主の条件を整理
実現条件を確認
- 解約の可否と合意
- 終了日と移行費用
- 入居者契約の引継ぎ
解約済みの条件では約束しない
終了が遅れた場合と費用が増えた場合も確認
Bは実現できることを保証する選択肢ではありません。解約可否の法的判断と、買主の価格・融資判断は別々に確認します。
| 確認すること | 継続して売る | 解約後に売る |
|---|---|---|
| 収入 | 借上賃料と改定条件 | 入居者賃料と空室等の見込み |
| 支出 | 現契約の費用分担 | 移行費用と直接運営の負担 |
| 時期 | 所有者変更と決済の調整 | 終了日と管理切替えの調整 |
| 未確定事項 | 買主の受入条件と融資 | 解約の成立と価格の再評価 |
解約後の案では、一時費用に加え、待つ間の賃料収入と管理費・利息等も入れます。売却費用・残債・税金まで反映して手残りを比較し、ローン元本返済と決済時残債を二重に差し引かないようにします。
終了が予定より遅れる、想定した賃料を受け取れない、買主の融資条件が変わる。その場合でも希望する期限や手残りを守れるかまで考えると、価格差だけに引っ張られず判断できます。
06 / READY FOR APPRAISAL
契約書と送金明細から
相談を始める
最初から解約を申し入れる必要はありません。まず手元の借上契約書と最新の送金明細で、今の条件を把握します。そのうえで、次の資料を揃えると二つの案を具体化できます。
- 01
借上契約の一式
契約書、重要事項説明書、更新書、覚書。契約期間、家賃改定、免責、解約、所有者変更の条項を確認します。
- 02
受取額と控除の記録
直近の送金明細と入金記録。借上賃料、共益費、修繕等の控除を分け、減額の申入れがあればその書面も添えます。
- 03
入居状況と転貸契約
住戸別の賃料、空室、敷金、特約を整理。資料が手元になければ、サブリース会社に提供可能な範囲を確認します。
- 04
費用負担と工事予定
清掃、点検、修繕、原状回復、募集費用を誰が負担するか。契約上の分担と直近の実績を照合します。
- 05
引継ぎや解約の回答
所有者変更の手続き、解約の可否・時期・精算額、未合意の項目を区別。口頭の見込みは確定事項にしません。
買主へ示す資料では、「現在の契約と実績」「解約等の合意済み事項」「まだ確認していない見込み」を分けます。入居者の個人情報は、提供目的と開示先を確認し、必要な範囲で取り扱いましょう。
07 / QUESTIONS
よくある疑問
サブリースが残っていても査定できますか
相談できます。借上契約と受取収支を前提に確認し、必要に応じて解約後の案も条件付きで比較します。解約を済ませることが査定の前提ではありません。
満室なら解約した方が高く売れますか
満室でも、直接運営の費用や今後の空室、解約の実現性が残ります。入居者賃料の合計だけで価格を決めず、継続・解約後の条件を揃えて比較します。
契約満了まで待てば終了できますか
普通借家では、満了日だけで必ず終わるとは限りません。更新拒絶の手続きや正当事由を確認します。定期借家は成立要件と満了通知等が異なるため、まず契約の種類を確認してください。[3][4]
会社が入居者の資料を出してくれないときは
契約の報告条項と提供可能な範囲を確認し、保有している資料と不足資料を整理します。不明な家賃や敷金を推測で埋めず、査定上の未確認条件として明示します。契約上の権利に争いがあれば弁護士等へ確認しましょう。
NEXT STEP
解約を決める前に
今の売却条件を確かめる
ユナイテッド・エステートが、サブリース契約と受取収支、希望する売却時期を伺い、現在の条件での売却を検討します。資料が揃っていなくても、分かる範囲からご相談いただけます。
サブリース付き物件の無料査定解約交渉の代理や法的判断は弁護士等の専門家へご相談ください。査定は成約や特定の価格を保証するものではありません。
参考資料と確認日
- 国土交通省「賃貸住宅管理業法 よくある質問」 — 特定賃貸借契約の定義・賃貸人変更時の取扱い。新オーナーへの契約内容が分かる書類の交付は「望ましい」とする案内です。
- 国土交通省「サブリース事業の適正化のための措置」 — 家賃減額リスク、維持保全等の費用分担、免責、解約・承継に関する説明事項。
- 国土交通省関東地方整備局「賃貸住宅管理業 よくある質問」 — 制度関係Q5(正当事由と解約)、Q7(標準契約書の位置づけ)。
- e-Gov法令検索「借地借家法」 — 第26〜28条・第38条。定期建物賃貸借の成立・終了は国土交通省のQ&Aも参照。
- 国土交通省「特定賃貸借標準契約書」と「サブリース住宅標準契約書」 — 借上契約終了時の転貸人の地位・敷金等の承継。実際の契約に同じ条項があるとは限りません。
2026年10月9日確認。制度・契約関係は上記一次情報に基づく一般的な説明です。価格評価と比較の手順は一棟ラボの実務上の整理で、数値は説明用の仮定です。個別の契約の有効性、解約可否、承継や精算の判断は、契約内容と事情に応じて弁護士等へご確認ください。